今回は、社会保険についてお話していきます。社会保険は、国民が健康な生活を維持できるように、そして安定した生活を送れるようにするために国がつくった制度です。しかし、生活に密着していながら、詳細を知る人は多くはないでしょう。ここでは社会保険の中でも健康保険に焦点をあてて解説していきます。これを読んで今後の社会保険の加入の参考にしたり、福利厚生制度の参考にしてみてください!
社会保険は、病気やケガになった場合や、老後、労働災害、失業などした際に保障してくれる制度です。
広義の意味での社会保険は、「健康保険」、「介護保険」、「厚生年金」、「労災保険」、「雇用保険」をいいます。このうち、「労災保険」と「雇用保険」は、狭義の意味では「労働保険」と呼ばれます。「労災保険」は、業務中や通退勤中のケガなどを保障するもので、保険料は全額企業が負担します。そして「雇用保険」は、企業を退職して失業した場合の基本手当(俗にいう失業保険)の給付や、職業訓練にともなう給付などをおこないます。保険料は、企業と従業員が分担して負担します。
狭義の意味での社会保険は、「健康保険」、「介護保険」、「厚生年金」をいいます。以下で述べる社会保険は、この3つをいいます。「健康保険」は、病気やケガで病院にかかった場合などの保障をおこないます。「介護保険」は、介護される場合などの保障、そして「厚生年金」は、老後の生活などの保障をおこないます。
社会保険は、任意に加入する場合もあれば、強制加入しなければならない場合などがあります。
社会保険の適用対象となる事業所を「適用事業所」といいます。法人は、適用事業所であり、社会保険は強制加入です。本社や支店、工場などの事業所単位での加入となります。
個人事業主が経営する事業所の場合は、従業員の人数により異なります。従業員が5人未満の個人事業所は適用事業所ではありません。しかし、従業員の半数以上が社会保険に加入することに同意し、事業主が申請して認可がおりれば社会保険への加入が可能となります。これを「任意適用事業所」といいます。
そして従業員が5人以上の事業所は、適用事業所です。ただ、5人以上でも農林漁業をおこなう個人事業所は適用事業所とはなりません。
適用事業所に常時使用されている人は被保険者となります。以下に該当する人が社会保険の被保険者です。
<パート・アルバイトが加入できる条件>
なお、各保険には年齢制限があります。「健康保険」は75歳未満、「介護保険」は40歳以上65歳未満、「厚生年金」は、70歳未満でした。
健康保険と国民健康保険はどう違うのでしょうか。おもな違いを表にまとめてみました。
健康保険 | 国民健康保険 | |
---|---|---|
保険者 | ● 健康保険組合(社員が700人以上の大企業が単独で設立する組合、複数の企業が集まり合計3,000人以上の社員がおり、国の許可を得て運営する組合など) ● 協会けんぽ(上記健康保険組合に加入していない被保険者が対象。多くの中小企業が加入している) |
● 市区町村 |
加入対象者 | ● 上記の章「社会保険に加入する条件」を参照 | ● 個人事業主、無職の者など社会保険に加入しない人のうち74歳以下の人 |
保険料 | ● 標準報酬月額(毎年4〜6月に支払われる基本給などの平均額)を元に10月〜翌年9月の保険料が決まる。保険料負担は、協会けんぽは企業と従業員が折半。健康保険組合は、企業と従業員が必ずしも折半とは限らず、組合により企業が5割以上負担し、残りを従業員が負担する場合がある。 ● 配偶者やこどもなど被扶養者の保険料納付は不要 |
● 前年の所得に応じて世帯単位で算出される ● 保険料率は市区町村により異なる ● 「扶養」という概念がないため、配偶者やこどもでも被保険者となり、保険料が発生する |
企業に属している時は社会保険に加入していますが、退職した場合は、どうなるのでしょうか。
退職した場合、社会保険の適用事業所へ転職した場合は別の健康保険組合の社会保険に加入したり、家族の扶養に入ったり、国民健康保険に加入したりなどさまざまな選択肢があります。そして、「社会保険の任意継続」という選択肢もあります。
社会保険の任意継続とは、社会保険に2ヵ月以上加入していたら、退職後2年間はその社会保険に加入し続けることができる制度です。なお任意継続は、健康保険と介護保険が対象で、厚生年金は該当しません。
任意継続すると国民健康保険より手厚い保障が受けられたり、配偶者や子どもなどの被扶養者の保険料負担が不要であるといったメリットがあります。ただ、保険料は企業が負担していた額も自己負担となるなど注意点もあります。保険料については、任意継続と、国民健康保険とどちらがお得かお住まいの市区町村に問い合わせてみるのもいいでしょう。
今回は社会保険についてまとめてみました。社会保険は病気やケガなどした場合に利用し、病院窓口での自己負担を減らしたり、その他、さまざまな保障が受けられる頼もしい国の制度です。そして働き方によって加入する社会保険が変わり、保険料なども変わります。それらを理解して、より有利にお得な制度に加入しましょう。そして企業側はどのような条件になったら社会保険の適用事業所になるのかを知って従業員の福利厚生に役立てましょう。